10.イタリア:おとなのヴァリチェッラ

イタリア生活も2年目に入った頃のある日。会社の同僚が、「今日の午後、うちの末娘(エリカちゃん当時2歳)を会社に連れてきてもよいか?」と聞いてきた。いつもは問題なくベビーシッターにあずけていられるのだが、今日という今日は、「マンマ~~!!」の一点張りで、食事も食べないと言うのだ。べビーシッターも、あまりの荒れ振りにおろおろしているとのこと。その日会社にいたのは、私とその同僚だけ。エリカちゃんは私のお気に入りだったし、ママと一緒ならきっと落ち着くだろうということで、会社に連れてくることにした。

同僚は、エリカちゃんを迎えに行く前に、「あっ。ジュンキーナ、念の為・・・ヴァリチェッラ( 水疱瘡)はやった??」と聞いてきた。水疱瘡は・・・・・確か、ハイハイ時代に済んでいたはず。母が言っていたはず。・・・「うん。やったよ。」
どうやら、近所のチビッコの間で水疱瘡が流行っていたらしく、エリカちゃんももしかしたら?と思ったようだ。

会社にやってきたエリカちゃんは、多少いつもより甘えん坊だったけれど、熱も無くブツブツも無く、健康なようだった。ママが近くにいることで安心したのか、おとなしく一人遊びをしていた。

それから4日後。「やっぱり、エリカがヴァリチェッラになっちゃったのよ。だいたい伝染してから15日位で症状が出るんだって・・・。この間ぐずっていたのもそのせいみたい。」と、同僚。そうか、じゃぁ、今頃ブツブツのカイカイなんだね~。子供の病気だもんねぇ~。エリカちゃんのブツブツ写真撮っておいてね~!などと、エリカちゃんの辛さそっちのけで、私達おとなはワイワイ騒いでいた。

それから10日後。私とピエールは、めずらしく一緒に散歩をしていた。すると、突然頭が痛くなり、どんどん熱っぽくなってきた・・・「お家に帰ろう。」
そして、パジャマに着替える途中、お腹に赤い小さなプツプツ発見・・・「虫刺され?」。
夕飯時になると、お腹のプツプツが痒くなってきた。寝る頃になると、痒くて痒くてたまらなくなってきた。

そして翌朝、鏡を見てびっくり!そこには、超ブッツブツな 私がいたのだ!! 「ひえ~~!!ピエ-ルゥ~~!!」。
そんな私を見たピエールは、大笑いしながら「ジュンキーナ。それ絶対 ヴァリチェッラ !!間違いないよ。2度もやるはず無いから、もう一度、お母さんに電話して確かめた方がいいんじゃないの?」
早速、母に電話してみる。・・・・・「え~~。あんた、水疱瘡やったっけぇ??」えっ??お母さん!そんな頼りないこと言わないでぇ~~!だってだって、私が赤ちゃんの頃の写真に、ブツブツができているのが数枚あって、これはジュンキーナが水疱瘡になった時って、お母さん言ってたじゃん!!「え~~、そうだった??はしかじゃなくて?」!!!母よ!私は水疱瘡と聞いていたぞ!!今更そんなぁ~。

・・・そう。私は30歳にして水疱瘡になってしまったのだ!!

体全体にできたブツブツは、あっという間に水ぶくれ状態に膨れ上がった。ピエールは、「ジュンキーナ。キモ~~イ!!」等と、30歳にして水疱瘡になった私を冷やかしていたが、私はそれどころじゃなかった!大人の水疱瘡は、予想以上に辛いものだったのだ!!
痒みはあまり無かったのだが、39度近くの高熱が3日間続いた。とにかく、体が痛いのだ。結局ブツブツがカサブタになるまでに2週間かかってしまった。そして、今でも数箇所に痕が残っている。別にかいたわけではなく、自然に痕が残ってしまったのだ。それに比べて、若い(というより2年しか存在してないよ)エリカちゃんは、1週間で痕もきれいに無くなったという。28歳の差はこうも違うのか??ブツブツブツ・・・。

かさぶたもとれた頃、私はエリカちゃんに会った。エリカちゃんはモジモジと私のところへやってきて、私の額に残った水疱瘡痕を指差しながら不思議そうな顔をしている。エリカちゃんもかかったヴァリチェッラの痕だよと言うと、何だかエリカちゃんの様子が変である。自分の体を見ながら一生懸命なにかを探している。そして、泣き出した~~/(゚ロ゚)/。えっ!私の痕が恐かったのかしら???

エリカちゃんが泣いた理由というのは、「自分には、痕が残らなかった」である。水疱瘡にかかった時、エリカちゃんは発熱や痒みがあまり無かったらしく、周りは周りで写真を撮って笑っていたので、「これはきっと、体に模様ができたお祝い事?」と、ちょっぴり勘違いしたらしい・・・。そして、その模様(水疱瘡痕)が自分にはもう残っていないのがとても悲しかったらしい・・・。

なんて可愛くって幸せ者なエリカちゃんなの(私に水疱瘡くれたのもあなただったけれど) ♪ ♪ ♪